栽培禁止のケシの種類・規制される理由
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ケシって??
ケシといえば、アヘン。アヘンはケシの実から抽出した麻薬の一種です。以前は東南アジアのタイ・ラオス・ミャンマーで栽培されていましたが、現在アヘンの大半はアフガニスタンで栽培。
早朝、実に傷をつけると汁が滲みます。それを集めたものが「生アヘン」と呼ばれるものになります。現在は実を溶液につけて抽出する方法が一般的。
アヘンは麻薬としては比較的弱いのですが、非常に強い麻薬であるヘロインの材料にもなります。
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たまにケシを間違って販売することがあるので注意
何年かに一回、業者が
ポピーと間違って違法なケシを販売していることがあります。違法にケシを販売していたというわけでなく…ポピーにケシが混入してた…ってことです。
なんて書くと、業者のワキが甘いように聞こえますが、元々ケシや大麻は日本中に生えていて珍しい植物ではありませんし、頑健な植物です。混入しても不思議じゃないし、知らないうちに栽培していた!なんてことも十分あります。間違って栽培してしまわないようにしないといけません。
そのためにも栽培禁止のケシについてもある程度知っておいて損はないでしょう。
栽培していいケシ
ケシというとイメージが悪いですが、ガーデニングでは
ケシ科のポピー、
オリエンタルポピーなどがよく栽培されていて、身近な植物でもあります。
道端にポンポンとオレンジ色の花を咲かせる「
ナガミヒナゲシ」もケシの仲間で、アヘンも何も取れません。見た目も愛らしいし、皆さん放置して、どんどん繁殖中です。
栽培が違法のケシ
ボタンゲシ
麻薬成分を抽出するケシというと「ソムニフェルム種」で、各地でこのソムニフェルム種の変種が栽培されてきました。
本来は一重ですが、画像のような
ボタンゲシ(Papaver somniferum)は花びらが八重になっていて、なかなか美しい花を咲かせる種類です。花が終わって大きな実をつけます。江戸時代から日本で観賞用として栽培されてきましたが、戦後に栽培が禁止になっています。
海外では栽培が禁止されていないので、海外旅行で何も知らずに
種子を買って帰り、栽培して摘発ということがちょいちょいありますので、注意しましょう。
葉・茎・ツボミには毛がほぼない。葉っぱは茎を巻き込むように付きます。
アツミゲシ
アツミゲシ(Papaver setigerum)は日本に帰化しているケシの仲間。日本にはどうやら
肥料や
用土の中にまぎれて侵入し、ケシ特有の小さく大量な種子をばら撒いて、現在でも駆除しきれていない。もしも上の画像のようなケシが見つかったら、通報しましょう。実には麻薬成分が含まれているが、実が小さく、ここから麻薬が抽出されることはない。
葉・茎・ツボミにソムニフェルム種よりは毛が生えている。葉っぱは茎を巻き込むように付きます。
ハカマオニゲシ
ハカマ
オニゲシ(Papaver bracteatum)はトルコなどで自生するケシの仲間。花びらは赤く、黒い斑が入ります。現在、日本では栽培を禁止しています。花の下にハカマと呼ばれるものがあります。
オニゲシ(オリエンタルポピー)と見た目がよく似ていて、区別がつかず、外国から種子が混入していることもある…かもしれない。交雑もするし、ほぼ同じような色合いのオリエンタルポピーもありますので。
上の画像はオニゲシ(オリエンタルポピー)ですが、色合いや斑の入り方はほぼ同じです。
栽培してはいけないケシの見分け方
ネットで調べると、ケシは葉っぱの切れ込みが浅いとか、毛がないとか、書いてありますが、実際には種類によって区別は難しいことが多く、素人判断は危険。
栽培してはいけないケシ類の見分け方は下記リンク先が参考になります。
「厚生労働省ホームページ」不正大麻・けし撲滅運動の実施について
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000005ymd.html
内のポスターおよびパンフレット(それぞれPDF)
意図せず、違法ケシを育てていたり、発見したら?
どこからか土を持ってきたら、土に種子が混入することもありますし、ポピーの種子に混入することもありますし、非常に小さな種子ですから、近くに生えていると種が風に乗って、庭に飛んでくることもあり、意図せず栽培することもあります。
自宅で栽培していた場合は、さっさと処分してしまいましょう。ゴミ袋に入れて燃えるゴミとして出します。種子が飛ばないようにしてください。
近所でケシのような植物を栽培している場合は、自治体の保健所に連絡して相談してください。ケシは毎年、結構な摘発件数があります。悪意がなければ…つまり、麻薬成分を抽出しようとしていなければ、注意されて、ケシを処分されて、おしまいです。逮捕とか懲役とかは、よほど悪質なケースな場合だけです。
ケシを食べたことがありますか?
ケシの種は七味
トウガラシに入っています。またアンパンの上にまぶしてあるツブツブもケシ。
その他のスイーツやケーキにも入っていることがあります。ケシの種は炒ると香ばしく美味なので、古来から食用とされ、生活に欠かせないものです。当然ながら、そうして口にする食用のケシの実はモルヒネの含有が少なく、麻薬とは程遠いです。また発芽しないように熱処理されていますので問題はありません。
アメリカにはポピーシード=ケシの実を使ったお菓子を食べて翌日尿検査で引っかかって逮捕されたというジョークがある。もちろん冗談。食用のケシにそんな強い成分はありません。
なぜ日本はケシ栽培を厳しく取り締まるのか??
日本はケシの栽培に関して異常なほど厳しい国です。人類はケシを食用として長く栽培してきましたし、他の国、特にイギリスでは一般的な栽培すら問題にされていません。そもそも外国では栽培は違法じゃないことも多いんですよ。
外国から輸入したポピーの中にケシが混じることがあるのはそういう理由があります。また元々ケシの種子は小さく、痩せた土地でも繁茂する頑健な植物なので、根絶するということ自体が非常に難しくて、日本のように厳しく取り締まるなんて、なんだか無駄な努力って感じがしますが…
ケシと戦争
お話は第二次世界大戦にさかのぼります。
満州を独立させた関東軍は満州でアヘンを栽培。そのアヘンを中国に売っていました。といっても、日本が満州にアヘンを持ち込んでいたのではなく、アヘン戦争以降、中国全土ではアヘンが民衆にまで習慣として行き渡り、「アヘン絶対ダメ!」と言いつつ、税金を掛けていました。それは結果的にアヘンを公認することになり、ケシの作付けに応じて税収が増えたために、地方政府がケシの栽培を(事実上)奨励。日本はその流れに乗ったという言い方も出来ます。
とにかく日本は満州でケシを栽培し中国に売っていました。イギリスがインドでアヘンを栽培して中国に売っていたのと同じシステムです。その利益は莫大。その資金が関東軍独自の戦費となり、暴走。本来、財布の紐を握っているはずの本国政府の制止を無視して、第二次世界大戦へ突入したのです。
日本本国では「無理」「勝てない」「途中で停戦するなら」という認識だった戦争が泥沼にはまった理由に「ケシ」があったんですね。日本がケシ栽培にやたらと厳しいのは、そういう経緯があるから…と言われています。
うーーん、考えちゃいます。
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