挿し木でなんでも増やせるけど、種苗法に注意!
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挿し木とは
植物の茎や葉っぱを土などに挿して、繁殖させること。結実せずに繁殖するので、増やした固体は親株と同じ遺伝子を持つ
クローン体。
これに対して、同じクローン体でも、株を分割したり親株と子株を切り離したりして株と株を分けて新たな株を作るのを株分けといいます(球根の場合は分球)。
種子を採取して発芽させタネから育てるのは実生(みしょう)といいます。実生の場合は、親とは異なる性質の子ができる可能性があります。二世代目以降は貧弱だったり、あるいは折角の品種改良の良さが失われて野生にかえってしまったり、具合がよろしくないことも多いです。
種まきして発芽させて育てたい場合は、ちゃんとお店で種を買うのが確実。つまり、実生に比べて、挿し木や株分けはきちんと親株同様の高品質な植物が育つという利点が優れています。ついでにもう一つ植物の増やし方を挙げるなら、
接ぎ木というのがあります。これは根や茎の丈夫な近縁の植物を土台にして(台木)、自力では繁殖困難な品種の植物を人工的にくっつけ、合体させる方法です。つまり一つの株のなかで複数の品種が混在しています。うっかり根本の台木のほうばかり育てると目的のほうの品種が育たないことがあります。
増殖は個人利用の範囲で
挿し木に限らず、植物を増殖する行為全般に言えることですが、品種によっては種苗法で制限がかかっている場合があります。ざっくり言うと人の手で作出された品種の植物には著作権と似た権利が発生し、勝手な二次利用(ここでは勝手に増殖して譲渡したり販売したりすること)が制限されています。どんなに挿し木が簡単にできてしまう植物であっても、権利者でない一般人が安易に「どんどん増やしてネットで大量に売って稼ごう」などとすることはできません。それが登録品種である場合は、勝手に増やした株を無許可で販売・譲渡するのは違法です。増やす前にご注意ください。
挿木と挿し芽の違い
挿木は樹木から増やすこと。挿し芽は草花から増やすこと。方法・手順はどちらもほぼほぼ同じです。言い方がちょっと違うだけ。
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挿木の一般的方法
挿し穂取り・水揚げ
枝や葉を7cm〜10cmくらいに切って、挿し穂を取ります。切る時はハサミで切らずにカッターで切るか、ハサミで切った切り口を鋭利なカッターで改めて切り直してください。ハサミはどれだけ鋭くても「挟んで潰している」ため、細胞が壊れ、発根の確率が下がるからです。
新枝が発根しやすい場合もありますし、古い枝の方が発根しやすいこともありますので、それぞれの植物の解説ページを参考にしてください。
挿し穂の切り口を水に浸けます。これは
水揚げをするためです。挿し木・葉挿しをすると、根が出てくるまでは、葉っぱから水分が蒸発してしまいます。このまま挿していると、根が出るまでに乾燥して枯れてしまいますので、これを防ぐためです。加湿を嫌う植物は水揚げはしません。
切り口に発根剤を塗る
単に土に挿しただけでは根が出ない場合があります。そこで「発根剤(ルートンといったもの)」を切り口につけて発根を促します。
用土
「挿し木用の土」が売られていますので、これで挿してうまく発根させましょう。もしくは
赤玉土小粒や
バーミキュライトがよく使われます。挿木用の土は、一定の水もちと、「清潔で雑菌のない」ものが適しています。袋から空けたばかりで、再利用されていない雑菌の繁殖していない土を使いましょう。
器を用意する
鉢底に
軽石を入れ、
用土を入れ、普通の植物を育てるように用意して、挿し木します。もしくはよく苗を植えている黒いビニールポットに土を入れて挿木します。ビニールポットは苗を買った時に取っておくといいです。
挿した後の管理
後は室内の窓辺の、窓越し(あるいはレース越し)に日の当たるところや、戸外の明るい日陰に置きます。発根するまでは直射日光に当てないようにします。日光があたると蒸発が多すぎて、発根する前に萎れてしまいます。
ポットや鉢に植えているなら毎日水をやります。毎日水をやるのは大変なので、腰水にするといいです。腰水にしているなら、水を足し、水が汚れない様に取り替えてください。清潔に管理するのが挿木の大事なコツです。
あまり一般的ではないかもしれませんが、不要なプラスチックパックを使って挿し木をすることもできます。豆腐のパック(に代表されるような不透明の薄い四角いプラスチック容器)を2個用意し、1個の方にだけカッターやハサミで水抜き用の穴をところどころに作っておきます。穴は2mm幅くらい欲しいところ。まち針の穴程度では水は抜けません。もう一個のパックはその下に重ねて受け皿代わりにします。穴のある方のパックに用土を入れ、挿し穂を挿し、発根剤を薄めたものを土全体が浸るくらいまで入れます。
毎日水が減ったら足し、2日か3日に一回くらいは受け皿から持ち上げて古い水を捨てて入れ替え、土がきれいな水で濡れた状態を保つようにします。
水が過多になる場合は、上のパックと下のパックの間に割りばしなどを挟んで空間を作ったり、穴を追加で作って調節します。この方法だと室内なので直射日光を避けることができ、風でグラグラすることもなく、ほぼ水切れさせずに管理できます。乾燥を嫌う植物の挿し木に向いています。発根して、ある程度安定したら、上のパックだけ屋外の日陰・
半日陰に移して育てます。
向いている時期
植物の生育時期に挿し木します。大抵は真夏の暑い時期を除いた春から秋の間です。
挿し木に向いているのは「湿度が高い」「気温が適度(20度以上)」という環境です。湿度が高くて気温がそこそこある時期というと「梅雨」があります。大抵の植物の挿し木には梅雨は適期なのですが、湿度が高すぎて、植物によっては葉っぱや茎が腐ってしまうこともあります。
その他
コツ
●大抵の植物は節から発根するので、節のすぐ下で切って挿す。
花茎(花の根本)などで挿し木しても根や芽が出ない。
●葉挿しの場合、葉先の部分だけ挿しても、根や芽は出ない。挿すための葉っぱは葉っぱの根本から取る。
●管理場所は明るい日陰。日光が当たりすぎると蒸発が激しく乾燥する。
●挿し木をする土は市販されているものが便利。
●茎・枝を挿す場合も葉っぱは一枚以上を残す。すべて切ると発根しにくい。たくさん葉っぱを残すと葉から蒸発してしおれやすい。
●昼にしおれて、夜元気になるのは元気。
●葉っぱの面積が多いと蒸発が多くなるので、葉っぱが大きい場合は、丸めてヒモでくくって蒸発を防ぐ。
●葉っぱを一枚ずつ半分カットするのも蒸発対策として有効。どうせ水が不足すると葉っぱの先からしおれてダメになってくるので、最初から葉先をカットしておく。
●葉挿しでいけるか茎挿しがいいかは植物による。葉挿しでいけるとされる植物であっても、茎を挿す方が安易で確実な場合もある。
●まだ親の一部であったとき元気であった枝葉なら、挿し木の成功率はなかなか良い。親自体が弱っていたり親の中でも弱い箇所を挿し穂として切り取っても、大抵失敗する。
●
サボテンや
多肉植物の場合は根が出るまで水は不要。それ以外のほとんどの植物は、発根するまでの間、決して水が切れないようにする。
●……と上記のように気を使って様々な工夫をしても、必ずしも全部の穂がうまく発根するとは限らない。失敗分も含めて多めに挿し木しておく。
●植物にもよるけれど、その後最低一年間くらいは様子を見て、こまめに管理する。たとえ発根したとしても子株は親株と比べて小さく、基礎体力がないのでちょっとしたこと(水切れ、
葉焼け、虫による食害など)ですぐ枯れる恐れがある。
植物によっては水挿しといって、水に活けておくだけでも発根する場合もある。しかし、水の中で伸びた根をいきなり用土に植え付けてもその後がうまく根付かない植物がある。できれば、土で育てるつもりなら最初から土で育てる方がその後の安定感として無難。
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