ナメクジ(蛞蝓)の園芸における生態と駆除の方法・薬剤のまとめ
スポンサーリンク
ナメクジとは?
ナメクジ科・コウラナメクジ科・オオコウラナメクジ科などに属する、ソレっぽい外見のものの総称です。塩をかけると溶ける、なんていう実験の餌食になることで有名。
ナメクジは葉や枯葉を食べる。主に発芽直後の苗を全滅させらたり、柔らかい新芽を食べられて生育が止まったということが多いので腹が立つが、他の芋虫・毛虫系や
ネキリムシや
ハダニ・
アブラムシといった
害虫に比べると実際の被害は少ない。ただ、イメージが非常に悪い。
カタツムリとは近縁で、分類学的にはどちらも有肺亜綱の柄眼目で、カタツムリの一種といえます。カタツムリの殻が退化したものがナメクジで、カタツムリとの中間的な種類も存在します。この種類には薄い殻(のようなもの)が背中にあります。
ナメクジが何故殻を無くす方向に進化したのかというと、殻を捨てることで自由な行動が出来るようになったからではないかと言われています。例えば殻がないことで狭い場所にも入れるなど。また、このように貝類のうちで貝殻を無くす進化をすることを「ナメクジ化」と呼びます。
スポンサーリンク
ナメクジの生態
ナメクジの寿命や生活サイクル
5月〜11月に孵化して秋まで成長して産卵する。寿命は一年ほど(1年以上のこともある)。産卵すると親は死ぬ。よって毎年、しっかり駆除していると年々、ナメクジ被害は減るが、ナメクジは意外と移動距離があり、他の家・庭・畑からもやってくるため、完全に駆除はできません。冬眠はしない。じっとしているだけなので気温があがると活動を始める。
チャコウラナメクジが現在、日本でよく見かけるナメクジで、被害はほとんどこれ。チャコウラナメクジは気温が35度を超えると卵が孵化しないため夏は増えず、春と秋によく見かけることになる。夏に駆除するとした分だけ以降の発生は減る。また、秋にしっかりと駆除しておくと、春の
ロケットスタートを抑えられます。
ナメクジは夜に活動する。懐中電灯を持って、夜に戸外のコンクリ床へと行くと大量に見られる。ゾッとするがスコップなどで真っ二つにする。もしくは薬剤を。
●在来種のフタスジナメクジ・ヤマナメクジなどがいるが、庭や畑ではほとんど見かけない。
●鉢底や煉瓦の裏、石の裏などに卵を産みつける。発見次第潰してしまいましょう。
ナメクジが食べるものは?
ナメクジは生の葉も食べるし、枯れた葉も食べる。生の葉の…特に柔らかい新芽を食べるため、ガーデナーからは嫌われる。カタツムリは主に苔を食べるためナメクジのような被害は起こさない(全く起こさないのではなくてナメクジに比べると少ない)。
また、コンクリートからカルシウムを吸収するので夜にコンクリの床にたかる。
ナメクジの天敵は?
頭がトンカチみたいな形状のコウガイビル(プラナリアの仲間)…略してKGBがナメクジの
天敵で
ミミズも食べる。ガマガエルは昆虫も食べるし、ナメクジも食べる。ただガマガエルには毒があるので猫・犬を飼っている家では困るかもしれない。
その他の害虫の天敵についても知っておくといいです。以下のページを参考にしてください。
三すくみ
蛇がカエルを飲み、カエルがナメクジを食べ、ナメクジが粘液で蛇を溶かす。それで三すくみという状況が生まれるわけですが、どうして蛇を溶かすと思ったのでしょうか。当然、粘液が蛇を溶かすことはありません。
砂糖をかけたら??
塩をかけると溶ける、というのは実は正確ではなくて、塩によって体内の水分が放出されて縮んでしまうためにそう見えるだけです。縮んでも死んでおらず、この後に水に漬けると元通りになります。
塩で溶けるのは有名ですが、砂糖ってのは聞きませんよね。ちなみに、砂糖をかけると、塩と同じようなことになります。これは浸透圧の関係でなるので、塩だろうが砂糖だろうが同じことです。
その他の雑記
●ナメクジには広東住血線虫という寄生虫が住んでいますので、素手で触ったり、もちろん食べたりすると髄膜炎を起こして最悪死んでしまいます。よくスーパーのレタスなどにナメクジがくっついているが、それで広東住血線虫に感染して…という話はほとんどないので、そこまで気にしないでもいい。水で洗い流せば大丈夫。
●
スリット鉢のスリットからナメクジが侵入して、荒すので、スリット鉢を並べている人はナメクジ駆除剤の利用を。
●柔らかい土の中に潜る。
●水道メーターや戸外の電源ボックスの中がナメクジの巣窟になることがあり、場合によっては漏電や故障の原因になるので、園芸をしていない人でも薬剤で駆除はして損はないです。
ナメクジの予防・忌避の方法
湿気てくる5月以降、花壇を放置しておくと、ナメクジにやられまくります。雨が降った翌日、花壇を覗いて見ると、新芽に無数のナメクジが群がりムシャムシャと食べている光景をよく見かけます。まずは忌避・予防法をまとめていきます。
●鉢植えを地面に直置きしないだけでも、被害は減ります。
椿油粕
椿
油粕はナメクジ・ミミズ・
コガネムシの忌避効果があります。これを混ぜ込んでおくか、株下にペレットをまいていると被害が減ります。ナメクジよりコガネムシ(ネキリムシ)の被害予防のために使われることが多いです。
石灰
ナメクジは
酸性を好むため、
石灰をナメクジが通るところ(近寄って欲しくないところ)に撒いていると、石灰を嫌い、近づかなくなります。
木酢液・竹酢液
木酢液・竹酢液を薄めて散布することで忌避効果がある。木酢液・竹酢液にはナメクジ忌避の効果はあるが、ナメクジを殺す効果はないです。ただ、匂いがして猫が嫌がるので注意(木酢液・竹酢液は猫忌避になる)。
チャービル
コンパニオンプランツとして
チャービルを傍に植えるとナメクジがチャービルへと移動し食べて、被害が減少します。チャービルにたかったナメクジは駆除剤で取り除くか、手でトールします。
銅イオン
ナメクジは銅…というか銅イオンが苦手なので、銅テープを鉢に張ったり、鉢底網を銅のものを使うとナメクジ対策になります。ただ、忌避はしますが、駆除はしてません。
ナメクジの駆除方法
クエン酸をかける
ナメクジはクエン酸で駆除できます。5%のクエン酸水溶水(水100ml+クエン酸5g)を作り、スプレーでかけると死にます。塩をかけても死んではないがクエン酸では死にます。中性洗剤・ハイターでも駆除はできるが、環境に影響があるので、土壌で分解されるクエン酸の方がよいし、なにより安い。
●クエン酸は土壌を酸性にするが、2週間ほどで効果は消える。
●70%のアルコールをスプレーでかけても駆除できる。アルコールは蒸発し、環境への影響はない。
真っ二つにする
ナメクジはプラナリアやゴカイではないので、スコップで真っ二つにすれば死ぬ。二匹のナメクジにはならない。黒く変色してヒジキみたいになります。ですが、これを別のナメクジが食べる。手作業では追いつかないので、結局薬剤を使うことになります。
ナメクジ駆除剤
一番簡単なのが駆除剤を散布することです。ナメクジを誘引する成分(酵母など)が入っていて、食べに来たナメクジが死にます。ナメクジは夜に活動するので、夕方に適当にパラパラと撒くことで、翌日そこいら中に死骸が転がることになります。それを拾い集めないといけませんが、とにかく効果テキメンです。
ナメクジ駆除剤には二種あり、一つはメタルアルデヒド。メタルアルデヒドは安くて即効性があるが雨に流れる。もう一つの燐酸第二鉄粒剤は雨に強く、効果が残ります。ナメクジは雨後によく見かけるので燐酸第二鉄粒剤がよいですが、大抵は併用します。
●ナメクジがドッグフード・キャットフードを食べに来るので、誘引が弱いならこれらに薬剤を混ぜておくといいです。ただ、犬猫が食べないように気をつけましょう。
●ビール酵母などで誘引するタイプの薬剤は雨でカビる。
●ジャンボタニシを駆除するスクミノンという薬剤があり、ナメクジにも効果はあるが「水田以外には使わないでください」と書いてあるので、使わない方がいいかも。
参考:
メタアルデヒド系と燐酸第二鉄系ビールトラップ
お金を掛けたくない。
そんなアナタにはビールトラップがおすすめ。
●飲みかけのビール(缶)を、庭に置きます
●数日後には缶の中におびただしい死骸が
ビールにはビール酵母が含まれています。これが誘引し、缶の中に入り込んで、ビールの中で溺れて死ぬ。ナメクジは肺呼吸なので文字通り溺れ死にです。これが通称ビールトラップの仕組みです。
ビールが少ないと飲み逃げされますので、溺れるくらいの量が必要です。またビールにはナメクジを殺す薬剤は入っていないので、できればビールの中に殺虫剤(スラゴなど)を入れると飲み逃げの確率がグっと下がります。
●ナメクジがビールに集まるのはビール酵母と麦芽の匂いとされていますが、詳しいことは分かっていません。麦芽は関係ないかもしれない。
ナメクジの駆除剤・薬剤
ナメクジ・カタツムリ専用薬剤なら狙い撃ちできる。色んな虫を駆除できる薬剤は、クモ・
テントウムシといった駆除したくない虫まで殺してしまうので、場合によって使い分けるといいです。百均にもナメクジ駆除剤(メタアルデヒド系)は売ってます。
スラゴ
燐酸第二鉄粒剤の代表。ナメクジ・カタツムリに効果がある薬剤で、湿気に強い。誘引して食べて、巣に帰って死ぬ。カラスやスズメが食べるので、食べないようにカバーをするといいです(カラス・スズメは死なない)。
http://www.greenjapan.co.jp/surago.htm
ナメトール
ハイポネックス社が作る燐酸第二鉄系の薬剤。ナメクジ・カタツムリを誘引して駆除する薬剤。天然成分なので、土にかえる。また、犬や猫にも安全。スラゴ同様にカラス・スズメが食べる。
ナメナイト
メタアルデヒド系薬剤。ナメクジ・カタツムリを誘引して駆除する。メタアルデヒド系だが雨に強い。一晩で効果が見られる。ちょっと高価。
マイキラーL
ナメクジ・カタツムリにかけると駆除する普通のメタアルデヒド系薬剤。
ナメクジカダンスプレー
メタアルデヒド系。ナメクジにかけると駆除でき、吹きかけた場所に1週間ほどはナメクジが近寄りにくくなる。
ナメ退治ベイト
メタアルデヒド系。ナメクジを誘引して駆除する。
ナメクリーン
メタアルデヒド系。ナメクジ・カタツムリを誘引して駆除する。粒が青い。
サンヨール乳剤
ナメクジ以外にも
ウドンコ病などの
病気や、アブラムシやハダニといった害虫にも効果がある。植物に散布して駆除するが、ナメクジを誘引するわけじゃないので、狙い撃ちは難しい。
ダントツ水溶剤
ランネート
購入にはサインが必要な劇薬。効果はあるが、劇薬なので一般的ではないです。
米糠にビールとランネートを入れておくとナメクジが食べて駆除できる。ただし、動物も死ぬのでペットを飼っている家ではやめましょう。
スポンサーリンク
関連記事
病害虫